セピア

 
十六歳で終わった世界に

君が静かに笑った理由と

優しさがある



僕には一生解らない話が

君の手を今も握っているような



真っ暗で二人だけの部屋にも

僕の知らないところで育った優しさがある





「わたしは何も変わっていない」

君はただ悲しそうに笑った

聞きたくないよ

そんな話は聞きたくないんだ










幸せは簡単に汚れて

十六歳で終わった世界で

痛みだけがいつも君のそばにいた


あんなに真っ白なティースプーンで

掻き混ぜた温もりに溶けないもの










「わたしは今も変わっていない」

君はまた悲しそうに笑った

真っすぐ見てよ

きれいな目でこの部屋を見て

「それはないから僕を想って」

そんなの君にはどうでもいいと解っているよ










写真の色を時間が染めている

十六歳で終わった世界で

君が笑った優しさはもう

ここにはない





二度とない